親が亡くなって実家が空き家になった。相続したけれど、兄弟で共有名義になっていてどうすればいいかわからない――こうした状況は、今の日本で非常に多く起きています。
「とりあえず様子を見よう」と放置していると、固定資産税が増える・建物が傷む・近隣に迷惑をかける・売りにくくなるなど、問題がどんどん大きくなります。空き家になった実家は、早めに方針を決めて動き出すことが大切です。
この記事では、共有名義の空き家実家について「売る・貸す・解体する」の3つの選択肢と、それぞれの注意点・税金のポイントをわかりやすく解説します。
放置するとどうなるか:3つのリスク
空き家の実家を共有名義のまま放置すると、次の3つのリスクが高まります。
リスク①|固定資産税が最大6倍になる
住宅が建っている土地は、「住宅用地特例」という制度によって固定資産税が大幅に軽減されています(小規模住宅用地は評価額の1/6)。しかし、建物を解体して更地にすると、この特例がなくなり固定資産税が最大6倍になります。
また、2023年の空き家対策特別措置法の改正により、「管理不全空き家」に指定されると、建物が残っていても住宅用地特例が解除される場合があります。つまり、倒れかかっているような状態で放置しているだけでも、固定資産税が増える可能性があります。
リスク②|建物の劣化が進む
空き家は人が住まないことで、カビ・腐食・害虫の発生など劣化が急速に進みます。修繕費が増えるだけでなく、将来売却しようとしたときに買主がつきにくくなります。放置すればするほど、価値が下がっていきます。
リスク③|近隣への迷惑・行政指導
外壁が崩れる・雑草が生い茂る・害虫が発生するなど、近隣への悪影響が出ると、市区町村から「特定空き家」として指定され、改善命令や最終的には強制的な解体(費用は所有者負担)の対象になることもあります。

選択肢①|売却する(最もシンプルな解決策)
空き家の実家を誰も使わないなら、売却して現金で分けるのが最もシンプルで、トラブルが少ない方法です。共有名義の場合、全員が同意すれば通常の不動産売却と同じように進められます。
売却のメリット
- 現金が手に入り、共有者全員に公平に分配できる
- 維持管理の手間・固定資産税の負担から解放される
- 売却のタイミングを早めるほど、建物の状態が良く、高く売れやすい
売却のデメリット
- 全員の同意が必要(一人でも反対すると進まない)
- 譲渡所得税がかかる場合がある(ただし特例が使えることも。後述)
空き家特例(3,000万円特別控除)を活用しよう
相続した実家(被相続人が一人で住んでいた家)を売る場合、一定の条件を満たすと、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる「空き家特例」が使えます。
空き家特例の主な条件は次のとおりです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物であること(旧耐震基準)
- 相続した日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること
- 売却価格が1億円以下であること
- 売却前に耐震リフォームをするか、建物を解体して更地にして売ること
条件が複数あるため、「使えるかどうか」は必ず税理士に確認してから進めてください。使えるか使えないかで、税負担が数百万円単位で変わることがあります。
選択肢②|賃貸に出す(家賃収入を得ながら所有を続ける)
「実家を手放したくないが、誰も住む予定がない」という場合は、誰かに貸して家賃収入を得る方法があります。
ただし、共有名義の場合は賃貸に出すにも共有者の同意が必要です(長期の賃貸は全員の同意が必要なケースが多い)。また、入居者の募集・契約・管理・修繕対応なども継続的に必要です。
賃貸が向いているのは次のような場合です。
- 共有者全員が賃貸に同意している
- 将来的に誰かが戻って住む可能性がある
- 土地の価値が高く、売却よりも賃貸のほうが長期的に有利な地域
一方、共有名義のまま賃貸を続けると、修繕費の負担・家賃の分配・入居者とのトラブル対応など、共有者間でもめるリスクがあります。賃貸を選ぶ場合でも、共有名義を解消してから一人が管理するのが理想的です。
選択肢③|解体して更地にする(要注意)
建物が老朽化していて、修繕も賃貸も難しい場合、解体して更地にする選択肢もあります。ただし、解体する前に必ず知っておくべき注意点があります。
解体すると固定資産税が増える
前述のとおり、建物を解体して更地にすると住宅用地特例がなくなり、固定資産税が最大6倍になります。解体費用(木造で100〜200万円程度)がかかるうえに、毎年の固定資産税も増えます。
解体してから売るか、解体前に売るか
空き家特例を使う場合は「解体してから売る」ことが条件の一つです。一方、解体費用は買主が負担する代わりに価格を下げて売る「古家付き土地」として売却する方法もあります。どちらが有利かは土地の立地・建物の状態・税金の計算によって変わるため、不動産鑑定士や税理士に相談することをお勧めします。

共有名義のままだと動かせない理由
「売りたい」「貸したい」「解体したい」――いずれの選択肢を取るにしても、共有名義のまま一人では動けません。すべての行為に共有者全員(または過半数)の同意が必要です。
特に問題になりやすいのは次のようなケースです。
- 兄弟のうち一人が「売りたくない・実家を残したい」と言い張る
- 共有者の一人が遠方に住んでいて連絡がつきにくい
- 共有者の一人が高齢で認知症になり、同意が取れなくなった
- 共有者が亡くなってその子どもたちが相続し、関係者が増えた
こうした状況になると、売ることも貸すことも解体することもできない「どうにもならない空き家」になってしまいます。動ける状態のうちに共有名義を解消しておくことが、最大のリスク回避策です。
共有名義の実家を解消する方法
共有名義の解消方法は、基本的に次の4つです。
方法 | 向いているケース | ポイント |
|---|---|---|
全員で売却 | 誰も住まない・現金で分けたい | 空き家特例で節税の可能性あり |
一人が買い取って単独名義に | 住み続けたい人がいる | 鑑定評価で適正価格を確認 |
土地を分割(分筆) | 土地が広い・各自が別々に使いたい | 建物がある場合は解体が先になることも |
話し合いがまとまらない場合 | 誰かが強く反対している | 専門家に間に入ってもらうことで解決する場合も |

まとめ:空き家の実家は「早く動く」ほど選択肢が多い
空き家になった共有名義の実家は、放置するほど固定資産税・維持費・トラブルのリスクが高まります。また、時間が経つほど共有者の状況が変わり(高齢化・認知症・死亡など)、選択肢が狭まっていきます。
「まだ決まっていない」という段階でも、まず専門家に相談して現状を整理するだけで、次のステップが見えてきます。当センターでは、不動産鑑定士と税理士が一緒に状況を整理し、「売る・貸す・解消する」の最適な方法をご提案しています。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。