「誰も住んでいない実家を、このまま空き家にしておくのはもったいない。誰かに貸せないだろうか」――こうしたご相談は、共有名義の不動産を持つ40〜60代の方から非常に多く寄せられます。

結論からいうと、共有名義のままでも賃貸に出すことは可能です。ただし、いくつかの大事なルールと注意点があります。知らずに進めてしまうと、共有者間でのトラブルや、税金の申告漏れにつながることもあります。

この記事では、共有名義の土地・建物を賃貸に出すときの手順・同意の取り方・家賃の分け方・税金の基本・よくあるトラブルをわかりやすく解説します。

賃貸に出すには、誰の同意が必要?

賃貸に出す場合も、契約の「期間の長さ」によって必要な同意の範囲が変わります。

短期の賃貸(建物なら3年以内、土地なら5年以内が目安)

比較的短い期間の賃貸は「管理行為」として扱われることが多く、持分の過半数を持つ人たちの同意で進められます。たとえば3人で1/3ずつ持っている場合、2人が同意すれば賃貸できます。

長期の賃貸・更新のある契約

長期間の賃貸借契約や、更新が繰り返されることが想定されるケースは「変更行為」に近いと判断されることがあり、共有者全員の同意が必要になります。

「短期か長期か」の線引きは状況によって変わることもあります。トラブルを防ぐために、賃貸に出す前は全員に話を通しておくのが一番の安心策です。

賃貸の手順:3つのステップ

ステップ1|共有者全員に話して同意をもらう

まず、共有者全員に「賃貸に出したい」という意向を伝え、合意を得ます。このとき、口頭だけでなく、後から「そんな話は聞いていない」とならないよう、合意した内容を書面(合意書)に残しておくことをお勧めします。

書面には次の内容を記載しておくと安心です。

  • 賃貸に出すことへの同意
  • 管理を誰が担当するか
  • 家賃収入の分け方(持分に応じて分配するなど)
  • 修繕費や管理費の負担の仕方

ステップ2|不動産会社に依頼して賃貸借契約を結ぶ

入居者を募集し、賃貸借契約を結びます。共有名義の場合、賃貸借契約書の貸主欄には共有者全員の名前を記載するのが原則です。

実務的には、共有者の代表者一人が管理を担当し、他の共有者から委任状をもらって手続きを進めることが多いです。不動産会社に管理を委託すれば、入居者の募集・契約・家賃の回収・クレーム対応などをまとめてお任せできます。管理費は家賃の5〜10%程度が一般的です。

ステップ3|家賃収入を分配して、各自が確定申告する

家賃収入が入ってきたら、持分割合に応じて各自に分配します。各自は受け取った家賃を「不動産所得」として確定申告する必要があります。確定申告については後ほど詳しく説明します。

家賃収入の分け方

家賃収入は、基本的に持分割合に応じて分配します。たとえば3人が1/3ずつ持っている土地・建物から月12万円の家賃が入った場合、それぞれ月4万円ずつ受け取る計算です。

ただし、次のような費用は収入から差し引いて考える必要があります。

  • 不動産会社への管理委託費
  • 修繕費・リフォーム費用
  • 固定資産税(共有者間での負担割合を決めておく)
  • 火災保険料

こうした費用の負担をどう分けるかを、事前に全員で決めておくことが大切です。曖昧なままにしておくと、修繕が必要になったとき「誰が払うのか」でもめやすくなります。

税金の基本:不動産所得として申告が必要

土地や建物を賃貸に出して家賃収入を得た場合、その収入は「不動産所得」として確定申告が必要です。

確定申告の基本的な計算

不動産所得の計算式はシンプルです。

不動産所得 = 家賃収入 − 経費(管理費・修繕費・固定資産税・減価償却費など)

共有名義の場合、各共有者が自分の持分に応じた家賃収入と経費を申告します。たとえば持分1/3であれば、家賃収入の1/3と、自分が負担した経費の1/3を申告します。

気をつけたいポイント

  • 給与所得などと合算して課税される:サラリーマンの方でも、不動産所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です
  • 赤字になっても申告が必要なケースがある:不動産所得が赤字の場合、給与所得などと損益通算できることもあります
  • 経費の領収書は保管しておく:修繕費・管理費の領収書は確定申告で必要になります

税金の計算は状況によって変わります。初めて賃貸収入を得る場合は、税理士に相談してから申告することをお勧めします。

共有のまま賃貸にすると起きやすいトラブル

共有名義のまま賃貸に出すと、以下のようなトラブルが起きやすくなります。

トラブル①|修繕費の負担でもめる

入居中に設備が壊れたり、退去後に大規模な修繕が必要になったりすると、「誰がいくら払うか」でもめることがあります。事前に書面で取り決めておかないと、修繕が進まず入居者にも迷惑がかかります。

トラブル②|家賃の分配でもめる

代表者が家賃を一括で受け取り、他の共有者に分配する場合、「分配が遅い」「金額が違う」といったトラブルになることがあります。銀行振込で記録を残し、分配のルールを明確にしておきましょう。

トラブル③|退去後の方針で意見が割れる

入居者が退去したあと、「次も貸したい」という共有者と「今度は売りたい」という共有者で意見が割れるケースがあります。こうなると、次の賃貸契約も売却もなかなか進まなくなります。

トラブル④|共有者が亡くなって、その相続人が関係者に加わる

共有者の一人が亡くなると、その持分が相続人に受け継がれます。賃貸中に相続が起きると、賃貸借契約の継続や家賃の分配先が複雑になります。

「共有解消してから貸す」が安心な理由

こうしたトラブルを根本から防ぐには、共有名義を解消してから賃貸に出すのが最もすっきりした方法です。

たとえば、兄弟3人で共有している実家を、長男が他の2人の持分を買い取って単独名義にしてから賃貸に出せば、管理・修繕・家賃収入のすべてを長男が単独で判断・管理できます。他の共有者の同意を毎回取る必要がなくなり、迅速に動けます。

「誰が取得するかで揉めそう」という場合は、全員で売却して現金を分け、各自が好きな不動産を購入・活用するという方法もあります。

賃貸か売却か、どちらが有利?

使っていない土地・建物について「賃貸か売却か」を迷う方は多いです。一般的な判断の目安を整理します。

項目

賃貸に出す

売却する

まとまった現金

×(毎月少しずつ)

○(一度に受け取れる)

管理の手間

△(ある程度かかる)

○(売れば終わり)

土地を手放したくない

○(所有権は残る)

×(手放すことになる)

将来の活用の可能性

○(将来使うこともできる)

×(売ったら戻らない)

相続・共有者の複雑さ

△(続く限り管理が必要)

○(解消してスッキリ)

共有者間の関係や将来の見通しによって最適な答えは異なります。どちらが有利かは、土地の価格評価や税金の試算を踏まえて検討するのが確実です。

まとめ

共有名義のまま賃貸に出すことは可能ですが、事前の合意・書面の作成・費用負担の取り決め・確定申告など、やっておくべきことがいくつかあります。また、共有のまま続けると、将来的にトラブルが起きやすくなります。

「賃貸にするか、売却するか、それとも共有解消して整理するか」――こうした判断は、土地の価格・税金・家族の状況を合わせて考える必要があります。当センターでは、不動産鑑定士と税理士が一緒にご相談に応じ、最適な方法をご提案しています。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。